現実逃避の何が悪い

小説だって若者の読み物だと過小評価されていた時代はありました。ならば、ゲームや漫画やアイドルだっていつかは大衆に認められるはず。微力ながら、そういうお手伝いができればよいと思っています。

技術の限界

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 今回は現在一世を風靡している人気ドラマ「下町ロケット」に関して書きたいと思います。 

 

 僕も家族と見ていて、よく話題になります。とても面白いドラマですよね。どうやっても敵いそうにもない相手を打ち負かす感じがとても爽快です。しかし、今のガウディ計画編も面白いとは思うのですがロケット編に比べると少し劣ってしまうのが正直な感想です。何が違うのかについて僕なりの考えを書きたいと思います。

 

ロケット編は高度経済成長期の日本

 ロケット編はロケット開発を進めていた大手企業「帝国重工」によるバルブシステムが中小企業の「佃製作所」がすでに特許申請しているところから物語は始まります。自社開発にこだわる帝国重工はその特許もろとも買い取ろうとします。しかし、今後の経営を考えた佃製作所は部品提供を持ちかけて大企業とバトルすることになるのですね。

 

 ここですごく面白いなと思うのは、佃製作所のやり方がひたすら自分たちの技術力を見せ付けるだけなんですね。自社の開発現場を帝国重工の財前部長に見てもらい彼を説得するわけです。「余計な説明はいらないから、俺たちの作ったものを見ろ!」のような力技で財前部長をねじ伏せるわけですよ。ひたすら物を作り続けて売ってきた高度経済成長期を思わせます。

ガウディ計画はただの医療ドラマ

  さて、ガウディ編は心臓病を抱える子供たちに施す人工弁を佃製作所が共同開発する話ですね。本来小さな子供が人工弁をつけるとなると、成長するにつれて心臓のサイズも大きくなり、人工弁が合わなくなるそうです。そのせいで常に命の危機にさらされ、医療費も馬鹿にならないらしいですね。そこで、佃製作所のバルブシステムの技術と株式会社サクラダの繊維技術で成長に合わせていちいち取り替えなくても済む人工弁を開発しようというわけです。またまた面白いにおいがプンプンしますね~^^

 

 と、期待を膨らませていたのですが何やら普通の医療ドラマになってしまった感じがします。佃製作所が共同開発に踏み込むきっかけもサクラダの技術が優れているからというわけではなく、その会社の社長、桜田章の過去を聞き感動したから協力することを決めたのです。他にもそれに関わっている一村先生の思いや心臓病を患っている子供たちの願いという誰もが共感するような話を聞いて佃製作所は説得されていくのですね。ロケット編は技術だけで勝負したのに対して、ガウディ編は技術と登場人物の事情で勝負していくという感じが今までの面白さを失わせてしまったのではないかと思います。

 

技術だけではもう勝負できない

 しかし、これは制作側が悪いわけではないと思います。これがまさに今僕たちが生きている現代なのです。物だけ作っても売れない、それが今のです。別の付加価値を付け加えて他者製品と差別化を図っている現在のマーケットに似ていると思います。皆さんも物を買うときにその商品の背景を見て買うことはありませんか?その商品が持つ物語に共感して買い物をした経験はありませんか?今回のように、技術があっても他の要素がなければあんなに優しい佃製作所でさえも共同開発に踏み切ってくれないのです。

 

 ロケット編に関しても、よく考えると最後の帝国重工の社長への説得の決め手となったのは主人公佃航平の過去の失敗でした。自社開発に拘っていた社長の心を動したのは佃製作所の技術ではなく、そのバルブシステムが持つ物語でした。もう力技は通用しないのです。あらゆる戦略を考えなければ物が売れない、そういう時代なのです。でも、それが悪いとは言いません。逆に僕は良いことだと思います。技術では勝てないけれど、別の分野なら勝つことができる。そういう可能性が現代には広がっているのです。このドラマでは今どきのやり方を嫌味なやつらが取り入れているだけで、方法的にはありだと思います。

ロケット編 昭和→平成 ガウディ計画編 平成→昭和

  けれども、今日の第9回は久しぶりに力技でスカっとしましたね。やはり技術は嘘をつかない。技術が滝川以外のPMEAの職員の心を動かしたのです。このまま技術だけでどこかの企業を説得してくれる展開だといいのですが、どうでしょうか……。おそらく、帝国重工が出資社になるとは思います。ロケット編の最後は物語で勝負でしたが、ガウディ計画編では技術で押し切ってくれたら対極的になってすごく面白くなると思います。どういう終わり方か本当に楽しみですね~

 

 今回は「下町ロケット」について書いてみました。皆さん、納得していただけたでしょうか?

 

 最後までご覧いただきありがとうございました!(^^