カイロ・レン擁護論
現在大ヒットの『スターウォーズ』。アメリカでは『アバター』の興行収入を超えたとか……。すごいですね~
さて、周りにエピソード7を見た知り合いが増えてきて色々話をするのですがカイロ・レンの人気がないですね。理由はひとつ。小物だからです。人質に逃げられるだけでライトセイバーを振り回して物にあたるようなやつを誰も悪役としてかっこいいとは思えませんよね。
ただですね。皆さんベイダー卿のアップデートを期待しすぎじゃないですか?ダースベイダーを越える悪役が描けると思えますか?
というかですね。ぶっちゃけダースベイダー雑魚ですよ。あんな自分の力の強さに酔って、シスに付けいれられて暗黒面に染まっちゃうようなやつのどこがかっこいいんですか?挙句の果てにシスを裏切るんですよ。これのどこが悪役ですか?皆さん、悪役を勘違いしているようですね。それでは、僕が本物の悪役を紹介しましょう。
1.キング・ブラッドレイ(鋼の錬金術師)
彼はホムンクルスという人造人間なんです。精確にいえば、お父様の賢者の石を体内に取り込んでも自我を保つことのできた元人間です。他のホムンクルスはお父様の体内から産まれるものなんですが彼だけは人間ベースで造られたホムンクルスなのです。別名「『憤怒』のラース」。このおっさんがですね、めちゃめちゃ強いんですよ。一人で戦車ぶっ壊すし、手練の人間が3人相手しても戦えちゃうんですよ。異常に発達した視覚と鍛え抜かれた身体能力を武器に主人公サイドの人間を梃子摺らせるわけですよ。おそらくラスボスよりも主要キャラを殺したと思います。
そして、このブラッドレイがまたかっこいいんですよ。彼は幼少時から天涯孤独で、主人公が産まれた国、アメストリスの大総統になるために訓練を受けます。前述したとおり、彼は賢者の石に打ち勝って見事大総統になったのです。しかし、実は彼は決められたレールをただ歩き続けている自分に疑問を感じていました。大総統とは名ばかり、お父様の命令どおりにただ政治をするだけ。疑問に感じていても何もできない自分に文字通り「憤怒」していたわけです。その疑問を感じながらもお父様の邪魔をするものを排除していきます。しかし、最後に彼は自分のためだけに戦うのです。お父様のためでもなく、政治のためでもなく、一人の人間として最後の戦いに挑むのです。結局彼は負けるのですが、その散り際が何とも美しい。僕の好きな悪役のうちの一人です。
2.ヒーロー殺し ステイン(僕のヒーローアカデミア)
これは現在、週刊少年ジャンプで連載中の『僕のヒーローアカデミア』に登場する悪役です。彼はヒーローだけを狙った犯罪者で、彼がヒーローを殺す理由はひとつ、ヒーローを本来あるべき姿に戻すためです。彼の考えるヒーロー像は富も名声も求めない人物なのです。しかし、この作品に描かれるヒーローは現代でいうタレントのような存在になってしまっている。そんなヒーローが許される世界を壊すために彼は犯罪者となるのです。
そんな彼のバックボーンは元々ヒーロー志望の青年でした。しかし、様々な要因によって彼はヒーローを諦めることになってしまったのです。怒りに満ちた彼は、ヒーローを粛清するようになります。ただ、彼はむやみにヒーローを殺しているわけではなくしっかり判別してから殺しに移ります。その証拠に、主人公のデクがピンチになったときに助けるのです。自分の理念をしっかりと持ったダークヒーローで彼もまた素晴らしい悪役です。現在、『僕のヒーローアカデミア』は彼の思想に影響を受けたヴィラン(悪役)が暴れだそうとしています。死してなお(逮捕されただけですが)影響力はある。かっこよすぎます。
3.ジョーカー(バットマン ダークナイト)
彼を最強の悪役と言う方も多いのではないでしょうか。クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』で登場する悪役です。元々はバットマンシリーズで昔から有名な悪役ですが、この『ダークナイト』で描かれるジョーカーが圧倒的な悪なのです。まず、なぜ彼が最強なのか、それは「犯罪」が目的だからです。前述した2名はあくまでも「お父様のため」、「自分の理想を叶えるため」に殺人を繰り返していくのに対し、このジョーカーは「犯罪」が目的なのです。犯罪が行えるなら手段は選ばない。犯罪のためならば、マフィアとだって組むし、病院だって壊す。これほどのサイコキラーを僕は見たことがありません。
彼が最強たらしめる理由がもうひとつあります。彼には背景がないのです。劇中で父親に虐待されたとかなんとか言ってますが、結局それは嘘で、彼はなんの背景もなく異常性格犯罪者となるのです。ここがこれまでの悪役とは全く違った彼の強さなのです。その結果、バットマンは彼に負けてしまいます。確かに彼はバットマンに殺されますが、バットマンはジョーカーが悪の道へと誘ったトゥーフェイスが犯した犯罪を代わりに被らないといけない状況へと追い込まれるのです。ヒーローが市民が非難を受ける存在となってしまうのです。ジョーカーによって。
おそらく、ジョーカー以上の悪役はこの先に現れないと僕は思います。そのなかで、僕たちはカイロ・レンにどのような期待を寄せるべきか。あるいはエイブラムスがカイロ・レンをどのように描くつもりなのか。僕の推測では、エイブラムスはアナキンの別の姿を描いていくのではないでしょうか。ダースベイダーとなったアナキンが、もし自分の力を悪の道に使わないようになったら、どのような人生を歩んでいただろうか。それを伝えるためにカイロ・レンはあえて弱く描かれているのだと思います。皆さんもカイロ・レンのマスクを見て、あまりかっこよくないと思いませんか?これは意図的にそういうデザインにしているのだと思います。彼はなにからなにまでダースーベイダーを越えることはできないのです。
もうひとつの彼のメッセージは「どのようにして人は悪の道を歩むのか」ということだと思います。どんな悪人にもそれまで歩んできた人生があります。どんなに悪いことをした人がいたとしても、ただ非難するのではなく、まず一歩引いてその犯罪者の背景に注目するべきだとエイブラムスは僕らに語りかけているのではないでしょうか。ホットな話題で言えば、ISですね。確かに彼が行っているのは擁護しようのないテロです。ただ、彼らも彼らなりの思想があるのです。何が彼らをテロリストにしたのか。そのようなことから僕たちは考えるべきなのです。もしかしたらISの人々もやり方によってはカイロ・レンのように改心する(まだそうとは決まっていませんが)かもしれません。全員がジョーカーのように「犯罪」が目的の悪人ばかりではありません。ただ、あまり難しく考えずにエピソード8を待ちましょう。エイブラムスはきっと何か答えを提示してくれるはずです。それまでに僕たちができることは少しでも考える癖をつけることではないでしょうか。
最後までご覧いただきありがとうございました。